Simple Life
文化祭は大騒ぎ!
2話
〜飛鳥井明日香〜
内装もメニューも役割分担も決まった私たちは、早速行動を開始。
茶屋と言うことで、内装も和風に。できれば時代劇に出てくるような感じで、長椅子のみでしたかったのだけど、それだと全然お客さんがはけないということで、テーブルも使うことに。
こればかりは仕方ないかしらね。
ただし、椅子は時代劇の茶屋のようにすることになった。
雰囲気としては『峠の茶屋』という感じで。
内装や椅子の作成は男子を中心に。やはり男性はこういった大工仕事が好きらしく、進んで受け持ってくれた。
匠さんも例に漏れずに大工作業が好きなようで、率先して働いている。
……何だか、ああいう匠さんも格好いいかも……。
――はっ!?
い、いけない、いくら好きな人とはいえ、見惚れている場合じゃない。今は作業に集中しなければ。
教室に張ったりする布などの作成や飾りつけは女子が担当。
逆にこういった細々とした作業は女性が向いているし、好きなもの。実際、女子はみな楽しそうにウキウキと動いている。
私もこういった作業は楽しい。
さ、時間もあまりないし、チャキチャキ動きましょう。
余裕を持って動いたほうが、絶対にいい物が出来るはずだから。
「明日香、それは洒落か? だとするなら、あまり上手くない――」
「誰が駄洒落を言ったと言いました?」
匠さん……少し黙っててくれます?
「すみません、調子に乗りました……」
よろしい。
〜五行匠〜
教室内が喧騒に包まれている。
茶屋の椅子や机を作る者、内装の打ち合わせをしている者、メニューに頭を捻る者……様々。
まあ、俺も大工仕事に精を出しているわけですが、こっちはもうすぐ終わりそうなんだよね。何せ、男子の大半ががえんやこら、トントントンとやっているわけだから。作る数もそれほどじゃないし。
「男子ー! そっちの作業が終わったら、こっちも手伝ってー! 内装とメニューと食器類の打ち合わせー! ついでに着付けの練習ー! よろしくー」
……なんじゃそりゃ。残りの作業全部じゃねえかよ。
「随分調子いいな。俺たちに丸投げか?」
「何言ってるの。こういう時こそ男子が積極的に動いてくれないと。それにほら、最後の文化祭だよ? ここでいいとこ見せておけば、最後にカップル成立! みたいなことになるかもよー?」
「そこまで都合よく行くか。美味しいそうな餌で釣ろうとするなよ、己は」
「あはは、ばれてるか」
「当たり前だ」
調子のいい声に苦笑しつつ、俺たちはそれぞれの作業を手伝いに向かった。
俺が向かったのはもちろんメニュー! やっぱこれだよなー。
着付けの方も気になるけど倉島が行ってくれてるし、俺も明日香も目処がつき次第手伝うつもりだし、大丈夫だろう。
一度覚えちゃえば、結構簡単なんだから、着付けなんてさ。
「あら、五行君はこちを手伝ってくれんのね。よし、じゃ早速なんだけど、メニューでさー」
差し出された仮のメニュー表をザッと確認した。
「お茶に善哉、お汁粉、羊羹に大福……。うん、いいんじゃないか、何か問題あるのか?」
オーソドックスな和菓子のメニュー。ケーキとかとは違って手作りってのは難しいから、名店っていわれているところで買うつもりらしい。
それはそれで構わないんじゃないの?
「うん、それなんだけどさ、基本的にお茶とセットでの販売にしようと思ってるの。和菓子に日本茶は鉄板じゃない。だけど、お茶一種類だと寂しいのかな、と思って。ほうじ茶とか麦茶も入れようかって話になってるんだ。五行君の意見はどうかな?」
「ああ、そういうことか。そうなだな、そこまで拘らなくても――いいや、最後の文化祭だしできるだけ拘るか」
「そうそう」
メニュー担当のクラスメイトが意を得たりとばかりに頷いた。
うん、そういうことならこっちも拘りの意見を言おうか。
「だったら、抹茶は外せないだろ。それに緑茶だって幾つも種類あるんだし、いくつか予算内で入れたらどうだ? 和菓子だって栗羊羹とかイチゴ大福とか、バリエーション増やせばいい。やるならトコトンやろうぜ?」
「そっかー。そうかもねー。みんなの意見は?」
「いいじゃない、それで」
「ああ。お茶の種類は3種類くらいで選べるようにして、和菓子は種類を多くするってことでどうかな。お客も選ぶ自由があって楽しいと思う」
意見が幾つも出て、話し合いが活発化。
こういう話し合いもなんだか楽しい。これも文化祭の醍醐味かもなー。
ただ、議論が活発化し過ぎると喧嘩になりかねないという……。
いや、それも楽しいか。ワハハ。
「止めてください、そんなことになったら! もう、あなたという人は!」
って、明日香!? いつの間にー!?
目が更に釣り上がった明日香に廊下へと連れ出されて、しばらくお説教を喰らいました。
すいません、明日香。
許してください……。