Simple Life
文化祭は大騒ぎ!
5話

〜五行匠〜

 文化祭二日目。
 昨日一日働いたので、今日は完全にオフ。
 ゆっくりと最後の文化祭を楽しめる。もちろん、明日香と一緒に。
「明日香、まずはどこ回る?」
「……そうですね、特に決めずに、色々回りましょうか。目一杯楽しみたいですから」
「おっけ。んじゃ適当にぶらつきますか」
「はい」
 さて、どこから回ろうか?
 明日香と過ごす最初で最後の文化祭だしな。

 最初は校内の出し物のクラスを見て回り、クラス展示を見て回った。
 射的やら駄菓子屋やらがあり、手作りアクセサリーのクラスがあり……。
 どこもアイデアを絞って楽しもうというのが見て取れて、こちらも楽しく思った。
 射的では明日香をほっぽらかして散々遊んだので、明日香から窘められたが。
「次は外回らんか? 食い物屋台が結構出てるし。奢るぜ?」
「あら、豪気ですね。なら、その言葉に甘えます。行きましょう」
「おう」
 校庭へ出ると、様々な屋台が出ていて、元気に営業と呼び込みをしていた。
 ああ、いいなあ、こういうの。見ているだけで楽しくなるよな。
「何食べますか、匠さん」
「そうだな。取り敢えず、お好み焼きとか、粉物を」
 腹が減ってはなんとやら、だ。
 お好み焼きを二つ買い(言葉通り俺が払った)、邪魔にならないよう端っこで食べる。
「うん、結構イケるじゃん。200円なら十分だろ」
「本当に。意外です」
 もちろん、ちゃんとした店とは比べ物にはならないけど、こういう場でこうやって食べると不思議に美味く感じるんだから、不思議なもんだ。
 これもお祭りのパワーか。
「匠さん、飲み物が欲しいんですけど」
「へいへい、お任せを」
 しれっと言う明日香に、俺も笑顔で答える。こんくらい予想済みよ。
 小銭は沢山用意してきたんだからな!
 明日香が選んだのは、『南国フルーツジュース』というものだった。
 何を使ったんだかわからないけど、飲んでみると――。
「マンゴーと……パイナップル? のミックスジュースか。これまたイケる」
「南国と言うだけあって、爽やかな味ですね」
「ああ」
 これもまた『当たり』だな。
 何だ、予想以上にどの出し物も頑張ってるじゃんか。これは本当に嬉しい誤算って奴だ。
「さ。ではまた回りましょうか。でも、のんびりと回りましょう?」
「おっけー」
 ゆっくり楽しまなきゃな。

 せっかくなんで、千秋や遠矢のクラスの店にも寄ってみたんだけど、二人ともいなかった。シフトは昨日で終わって入るらしい、残念。
 ま、仕方ないやね。
「せっかくだし買ってこう。二つ頂戴」
「まいどありです、五行先輩」
「ん? 俺知ってんの?」
「当たり前っすよ」
「そりゃどうも。……ほい、明日香」
「ええ、ありがとう」
 軽口を交わしつつ、金を支払い、たこ焼きを受け取る。
「……あれ、飛鳥井先輩!? え、ってコトは……。ええ?」
 あんぐりと口を開けた一年にニヤッと笑って、手を振る。
「お察しの通り。じゃあな」
 意外なんだろうな、俺と明日香の組み合わせって。
 ああ、でも何か悔しいような……気のせい?

 再び校内へ戻ってきた俺たちは、明日香の希望で3年の美術科がやってるというケーキ屋へ。
「へえ。ケーキ。でも、いいのか、明日香? 前にケーキバイキング、あんなに嫌がってたのに」
「一つくらいなら問題ありません。幾つも食べるのが問題なんです」
「そんなもんですか」
「そういうものです」
 さらりと言った明日香の目は笑っていた。
 ハハ、なら何も文句は言えないな。
 じゃあ、こっちはケーキを堪能させてもらうとしよう――って、あれ?
 目的の教室の前に人だかりが出来てる。
 ……何だ? 何かあったのか?
 明日香と顔を見合わせ、それでも近づいていくと中心にいたのは。
 千秋と片瀬、それにツインテールにした女の子。
 更に派手な髪の色をした不良っぽい子に、ぽわんとした雰囲気の子に加えて邪神を背負いつつ支配化に置いているような子だった。
 いや、自分でも何を言っているのかよくわからんが。
「匠さん、何でしょうね?」
「さあ? しかし、騒動の中心に千秋と片瀬がいるのは間違いないな。睨み合ってるし」
「ですね」
 しかし……千秋の周りって、女の子ばっかりだな。そういう運命の星の下にでも生まれてきたのか、あいつは。
「ヘタに近づけませんね。一触即発の雰囲気ですし。様子を見ましょうか」
「だな」
 明日香の冷静な判断に同意する。
 が、こうなった理由が知りたいな。まあ、片瀬とツインテールの子とで千秋を取り合っているんだろうけど。
 いつ爆発するかな、これ――。
「ええ、そうよ! 私と那智君は付き合ってるの!」
 俺の思考を遮ったのは。
 怒ったような、悲鳴のような、泣き声のような。
 そんな片瀬の叫びだった。


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