14話 尾行開始!

 協力をすることにした俺たちは表面上はそのままに、作戦を練っていた。
「じゃあ、アトラクションを取り敢えずみんなで乗って、それからばらけるということで。後は距離を保ちつつ尾行……」
「うん、それで行きましょ。やるのは私と葛西君と志乃と久保君……」
「先輩たちは?」
 最後方の二人を見ると、談笑しながら着いてくる。ただその歩みは激しく遅い。
「放っておいたほうがいいでしょ。元々、あの二人もくっつけるつもりだったんだから、変に邪魔しないほうがいいわ」
「そうだね、そうしよう」
 フリーである俺たち四人で動いたほうがいいし。人数が多くても逆に動きにくいしね。
 俺はサッと先輩に駆け寄ると、耳打ちした。
「俺たち、鼓さんが心配だから二人の後を着けます。先輩は先輩で上手くやっててください」
「へ? だったら、俺も……」
「先輩は相模先輩との仲を進展させると言う前提があるでしょう。こっちは俺たち四人で何とかなりますから。先輩は先輩で頑張ってください」
「う、それはそうだけどさ……」
 困ったように堺先輩は相模先輩を見た。相模先輩は大和川さんが上手く注意を逸らしてくれている。
「でしょ? だから、こっちは俺たちがやります。本当に困ったら、連絡して助けを求めるんで。そん時はお願いしますわ」
「……わかった。いいな、何かマズったら遠慮なく連絡してこい」
「ういっす」
 その辺はお願いしますよ、先輩。
 ……あいつと喧嘩とかになったら、俺太刀打ちできないもん、絶対。
「んじゃ、葛西君、行こうか。適当に乗り物、乗ろうよ」
「あいあいさー」
 大和川さんに軽く敬礼。
 変なことになりませんように。

 前を行く二人に声をかけ、そろそろアトラクションに乗ろうと誘う。
 ムカつく大学生は面倒臭そうだったけど、鼓さんが「乗りましょう?」と誘って何とか成功。
 ……乗ったのはジョットコースター。
 いきなりこれ? と思ったんだけど、大和川さんが「任せて、考えがあるの」と言い切ったので、お任せすることに。
 乗り終わった後、大和川さんの言った意味をようやく理解した。
 綾辻さんが、喜色満面の笑み。
 乗る前よりも元気一杯。
「もう一度乗りましょう!」とハイテンション。
 大和川さんが苦笑しながら「意外でしょ? 志乃って絶叫系アトラクションが大好きなのよ」と教えてくれた。
 うん、すげえ意外。
 一人で勝手にジェットコースターに並びそうな綾辻さんを横目にしつつ、大和川さんがさりげなく口を開いた。
「志乃が暴走しそうだから、ここらでばらけましょ。私たちは志乃に付き合ってるから、桜華や相模先輩は好きに遊んできなさいな」
「え? いいの?」
「ああ。綾辻さんと大和川さんだけ放っておくわけにはいかんでしょ。二人には俺と久保が付いてるから」
 俺も援護射撃。
 ここでばらけないと、俺らの計画が意味なくなるしね。
「なー、久保、お前も……」
 残ってくれるよな、と振り返ったが、いない。
 え? と思ったけど、よく見りゃ綾辻さんが並んじゃっているのでそれに付き合って、中へ消えていくところだった。
 ……早く戻ってこいよ?
「……まあ、あんな感じだから、俺らで残る。先輩たちもいいっしょ?」
「仕方ないな。ただ何かあったらすぐに連絡するってことで。桜ちゃんもいいだろ?」
 先輩も俺らの計画を知っているので上手く援護してくれる。
「でも」
「いいって、いいって。ここは葛西たちの好意に甘えようよ。ね?」
「……。わかりました。皆さんがそう仰るなら。前原さん、行きましょうか」
 鼓さんも納得してくれ、前原に声をかける。
「ああいいぜ。てか、お前らもわかってんじゃん、俺らを二人きりにするなんてよ」
 ニヤニヤと蹴っ飛ばしたくなる笑みを浮かべて、前原は鼓さんの肩を抱いた。
「あ……!」
 鼓さんが赤くなって俯く。
 こ、こいつ……!
 うわーい、今すぐにでも思いっきりドロップキックかましてえ!
「じゃーな。あばよー」
 ヒラヒラと手を振り、前原と鼓さんは歩いていった。
「じゃあ、頼んだよ、葛西」
「ういっす。任せてください」
「……お願いね葛西君。何だか鼓さん、可哀想なことになり兼ねないから」
「まっかせてください、相模さん! 桜華はちゃんと守ってみせます!」
 大和川さんがポンと胸を叩いて自信をアピールした。
「うん、任せる。……じゃあまた後で」
「はい」
「ええ」
 先輩たちも鼓さんたちとは別の方向に歩いていった。
「さ、桜華たちを追っかけるわよ」
「了解。でも、久保と綾辻さんは?」
「もちろん待つわ。そろそろ戻ってくるころだし。それに、あの大学生のお陰で桜華たち目立つもんね。すぐに見つけられるから、離れてても大丈夫よ」
「そりゃそうだ」
 それに、ある程度離れておかないと怪しまれるしね。
「悪い、今戻った」
「ごめんなさい、我を忘れてました」
 実際、大和川さんの言う通り、すぐに久保と綾辻さんは戻ってきた。
「おっけ。よし、いくよー」
 頷き合った俺たちは行動を開始した。
 さ、尾行開始だ。


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