12話 マジですか!?

 俺は早速二人に連絡し、みんなで遊園地に行く計画を話した。
「なるほど。……わかった、頑張って誘ってみる。みんなでってことなら、何とかなると思う」
「私も……頑張ってお誘いしてみます」
「そうして。日時は来週の日曜日を予定してるので。よろしく」
「わかった」
「はい」
 二人の了承も得たところで、俺は鼓さんにお願いをした。
 つまり――女の子を誘ってほしい、と。
 男女間のバランスが足りないから、という理由。
 まあ、これはダメモトなんだけど。いざとなれば佐野さんにお願いするしかないし。
「男性と女性の数のバランスですか……。確かに同数がいいですよね。……わかりました、仲のいい子がいるので、誘ってみます。多分大丈夫だと思いますから」
「ホント? 助かるよ。こっちの計画に無理に参加して貰うから、遊園地のお金はこっちで出すって言っておいて」
「え? いいんですか?」
「いいよいいよ」
 それくらいしないと悪い。
「わかりました。それでは誘っておきますね」
「ん」
 よし、これで当初の問題は片付いた。
 後は当日、臨機応変にやるしかない。
 しかし遊園地か。中学生の時に行ったっきりだなー。

 日曜日、俺と久保は一番乗りして皆を入り口で待っていた。
 ホストだから、早めに来たのだ。
「お〜い、葛西、久保〜」
「あ、先輩、おはようございます。早いですね」
「気が急いちゃってな。それで、こっちが」
 先輩は連れていた女性を俺たちに示した。
「おはよ。相模真由子(さがみ・まゆこ)。よろしくね」
「葛西和仁です、よろしくお願いします」
「久保祐一です。ヨロです、先輩」
 相模先輩は、気さくに話しかけてくれて、こっちも対応しやすかった。
 しかも、先輩は初めてC棟に行った時に対応してくれた人だった。
 そうか、先輩の好みって、こんな感じの人なのか。
「そっか、君たちか。一度会ってるよね」
「ええ、あの時に」
 話しながら待つこと数分。
「すみません、遅れました」
 鼓さんが二人の女の子を連れて登場。
「おはよう、鼓さん」
「桜ちゃん、おはよ」
「おはようございます、葛西君、カズさん。……えっと、こちらが友達の――」
 初対面である相模先輩を一瞬見たが、友人の紹介を優先したらしい。
「大和川百合絵(やまとがわ・ゆりえ)。よろしくねー」
「……綾辻志乃(あやつじ・しの)です。よ、よろしく願い、します……」
 肩くらいまでの長さの髪を首の後ろで束ね、フレンドリーにな感じなのが大和川さん。
 ロングヘアをそのまま背中に流し、ちょっとおどおどしているのが綾辻さん。
「アハ、ごめんね。志乃って、男の人に免疫なくって」
「あ、あのすみません、私、お父様と家の者とくらいしか男の人と会話したことなくて……」
 完全にお嬢様か。いるんだなあ、今時、そういう人。
 大和川さんは全く違うみたいだけど……対照的な二人だなー。
 何て思っている間に、鼓さんたちは初対面である相模先輩と挨拶を交わし、和やかに話していた。
 さすが女子、仲良くなるのも早い。
「これで殆んどか。後は鼓さんの誘った男子が一人、と」
 腕時計を見ると、もう集合時間なんだけど。
「すみません、ちょっと時間にルーズなところがあるらしくて――あ、来ました!」
「ああ、来たのか」
 どれどれ、鼓さんが好きなのってどんな奴――。
「――!? あ、あいつ……?」
 思わず「嘘だろ」と言葉が漏れる。
 いや、俺だけじゃない。
 堺先輩も相模先輩も、久保も大和川さんも顔を引き攣らせ、綾辻さんに至っては――。
「……ヒッ」
 悲鳴とも呻きともつかぬ声を発し、大和川さんの陰に隠れてしまった。
 そして。
「おお、桜華。待ち合わせしてるのって、こいつらかよ?」
 そいつは――鼓さんを呼び捨てにし、完全に見下した眼差しで俺たちを睥睨してきたのだった。
 マジかよ……。


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