俺とあいつとの出会いは中学の時。
 何が切欠で仲良くなったかなんてもう覚えてない。
 まあ、お互い無類のアニメ・漫画好きだからな、その辺りの話でもして仲良くなったんだろう、きっと。
『類は友を呼ぶ』ってくらいだから、無意識にでも『こいつは同類だ』って感じたんじゃないか?
 ……お互いに。

〜合縁奇縁のミルフィーユ〜
Another side view 
3話 俺とあいつと


 一度仲良くなった以上、俺とあいつ――長塚亮祐は一緒に行動することが一気に増えた。
 お互いにオタクだしな、周囲にはついていけないコアな話とかしていたし、アニメの感想とか言っていたから、むしろ周囲が引いてた感じ。
 俺もリョウ――いつの間にやらあだ名で呼んでた――も気にしていなかったし、『好きで何が悪い!』と胸を張っていたわけだ。
 そのせいか、友達はともかく女子には引かれまくって……彼女どころか、異性の友人なんて『何それ美味しいの?』だったよ。
 それでも――楽しかったよ、間違いなく。
 何でも話せる親友ができて、三年間、共に過ごせたのだから。

 高校も一緒でクラスも一緒という幸運にも恵まれて。
 再び俺とリョウの二人かなーなんて思っていたら、坂本清と阿部穂乃果という友人があっさりできた。
 たまたまライトノベルの話をしていたら「それって、この前アニメで見たけど、小説が原作なの?」と阿部さんが声をかけてきたのが始まりで。
 物怖じしないというか、さっぱりした阿部さんと話すようになって、流れで坂もっちゃんを紹介されて。
「アニメ? 俺も好きだぜー。小学生の時よか見なくなったけど」と普通に話してくれて、仲良くなった。
 ……本当に有り難いと思う。こんな俺らを【普通】として見てくれてさ。
 ただ、文句があるとすれば。
 中学の時から付き合ってるだとおおおおおおおお!?
 はっはっは。
 MOGERO!

 そんな馬鹿やているうちに、【ラブレター事件】が起きた。
 いや、まさかね、親友がそんな事件に巻き込まれるとは思ってもみなかった。
 しかも、あの小笠原千尋が主犯でいるんだもん、驚いたよ。ま、真相を聞いたら本人もある意味被害者だとは思ったけどな。
 で、小笠原さんはリョウに本気だったと。
 イヤイヤイヤ、びっくりもここに極まれり、って奴だ。まさか【不沈戦艦】小笠原千尋がオタクのリョウに惚れるとは。
 嬉しかったなー、本当に。
 これで彼女いない歴=年齢をリョウが打破してくれると思うとな。
 ……ああ、僻まないのかって?
 うーん、ちょっとは羨ましいとは思うぜ? あんな美少女に惚れられているんだから、羨ましいと思わないわけがない。だけど、僻む僻まないは別の話だろ?
 俺はあいつの親友だと自負してる。そんな俺が祝福しなくてどうするんだっての。
 ……え? 本当のところ?
『俺にもA組の可愛い子紹介してくれないかなー。可愛くてね、気立てが良くてね控え目でね、家事が得意な――』
 いるわけない? 現実を直視しろ?
 そんなのわかってんだよ! いいじゃないか、理想では夢見たってよおおお!

 ――あの一次的な二人の別れは、見ているこっちも辛かった。
 リョウ自身は「もう疲れたから」なんてほざいてたけど、実のところ別れたくなんかないって顔してるのがまるわかりだった。
 もちろん――小笠原さんもな。
 傍から見りゃ好き合ってんのが一目瞭然なのに、下らない嫌がらせで別れるなんて馬鹿なことがあっちゃダメだろう? 俺も坂もっちゃんも阿部さんも「気にするな」って何度も口を酸っぱくして言ったんだけど、リョウの奴は変に責任感じちゃったわけで。
 それであんなことに。
 田坂の馬鹿が首突っ込んできた時は、俺たちの方がやきもきしてたよ。
 つーか、何度殴ってやろうかと思ったか。その度に坂もっちゃんに止められたけどな。
 でも、リョウもちゃんと覚悟決めて自身の気持ちを自覚して、小笠原さんと向き会うと告げてきた際は、心底ほっとした。
 これで二人は元通り、仲直りってな。
 後から聞いた話じゃ、別れた後の小笠原さんも精神的にかなり動揺してて、田坂の毒牙に掛かりそうなまでに危ないところだったみたい。
 けど今じゃラブラブだからな、それもまたあの二人の結びつきを強めるスパイスになったってことでいいか。
 田坂はご愁傷様だけど。
 ま、何はともあれ、付き合いは順調のようで何よりだ。
 仲良きことは美しき哉。

 ただ、俺には一つだけ不満がある。
 それは何かって?
 そんなの決まってんだろ!
 仲間内で『俺だけ』に彼女がい・な・い・こ・と・だよ!
 坂もっちゃんには阿部さんがいるし、リョウには言わずもがな、小笠原さんがいるし……。
 ちきしょー! 俺も彼女欲しいわー!
 ……え? いい子がいるから紹介しようかって、マジ? マジですか小笠原さん! 流石持つべきは親友の彼女!
 で、その子のお名前はなんと仰られます?
 ……はい? 南雲璃々、ですと?
 何であいつの名前がここで出てくるの!?
『いつも言い合いしてるけど、その分仲良くなるの早そうだから』――それが理由?
 冗談じゃない! あいつは敵だ、仲良くなるなんてもっての他だ!
 おい、リョウ! 何笑ってやがる!
『意外とお似合いかもよー?』だと? 
 ふざけんなー!
 こんな哀れな俺に、愛の手を!

BACKINDEX
創作小説の間に戻る
TOPに戻る